雑 記 帳

2005年11月28日


「あれー 昭和62年てどんな年だったけかな。・・・・今頃、判決が出たんだ。」
 昭和62年の出来事:石原裕次郎 亡、巨人江川卓 引退、大韓航空爆破機墜落
 事件、NTT株売り出し など
  
昭和62年2月2日の夜 場所は赤坂。クラブ「夜の銀蝿」にて
「銀蝿ママ。今日 株買っちゃったよ。」
「段田先生。もしかしてNTT株買ったの?」
「そうそう、買えたんだ。初値160万円。値上がりする事、楽しみにしてるけどね。」
「先生、ええなー。絶対あがりまっせ。300万ぐらいいくんとちゃう。くやしー」
芸能プロダクション「小梅プロモーション」の社長 通称 小梅太夫こと坂田小梅はいった。
「坂田社長の会社順調だし、株式公開は考えてないんですか?公開になっちゃうと
クビになっちゃうかもしれないけど。」
「なに言ってまんねん。段田税理士とは地獄までいっしょでっせ。それに、うちは
公開は考えてまへん。公開はしまへんけど 新株は発行しよう思ってます。それで、
相談しよう思ってました。割り当ては、私が800株 息子が200株 考えてます。」
「相談って、発行価額5万円として。新株の時価はいくらか? というあたりですか。」
「そうそう。その辺から教えてほしんですわ。」
「未公開株の評価だから、類似標準株価か 純資産価額で判断していく事になる
けど。社長のとこは純資産価額でいくことになるでしょうね。そうなると、財産評価
通達でちょっと計算してみないといけないから、明日 早速やって報告しますよ。」
「たのんますわ。先生。」

それから2日後。
「坂田社長。このあいだの件ですけどね。まず新株に係わる税務を簡単に説明し
ますね。」

所得税法施行令(改正前)84条1項
法人から有利な発行価額による新株を取得した場合
  収入金額とすべき価額 = 払込期日における新株の価額 − 当該新株の発行価額
所得税基本通達(改正前)23〜35共−9(4)
非上場,気配相場がない株式の「払込みに係る期日における新株の価額」は?
売買実例のあるもの : 最近において売買の行われたもののうち適正と認められ
  る価額
売買実例のないもの : 類似法人の株式価額に比準して推定した価額「類似法人
  比準方式」それらに該当しないもの: 当該払込みに係る期
  日又は同日に最も近い日におけるその株式を発行する
  法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引される
  と認められる価額
法人税基本通達(改正前)6−1−4(3)
有利な発行価額で新株が発行された場合におけるその1株当たりの価額
非上場株の場合  同通達9−1−11から9−1−15までに準じて合理的に計算
  される価額
法人税基本通達(改正前)9−1−14(3)
「売買実例のあるもの、売買実例のないもので類似法人の株式の価額があるもの」 

        該当しない非上場株式で気配相場のないものの価額

「当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日における事業年度終了時の1株当
たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」
法人税基本通達(改正前)9−1−15
非上場株式で気配相場のないもの(売買実例のあるものを除く。)について
「相続税財産評価に関する基本通達」178から189までの例によって算定した価額
によっているときは,課税上弊害がない限り,所定の条件を付してこれを認める。
条件の一つとして,1株当たりの純資産価額の計算に当たり,土地を相続税路線価で
はなく時価により評価すること。
財産評価通達(改正前)185
1株当たりの純資産価額 は? 

課税時期における各資産     課税時期における     評価差額に対する法人税額等
 の評価額の合計額    - 各負債 の 合 計 額 − に 相 当 す る 金 額
 ------------------------------------------------------------
                         課税時期における発行済株式数

まあ、簡単に言うとこんなかんじですが、社長の会社の場合は、結論からいうと
一株当たりの純資産額(法人税相当額を控除後)の金額でいくことになります。
発行価額の5万との差額は一時所得となりますね。」
「なんか難しいな。まあ先生にまかせますわ。」
 
それから1年数ヵ月後・・・。
「先生 今回の税務調査で、税務署さんが一株当たりの純資産額の計算で法人税
相当額を控除する事は認めないと言ったのはどういう意味でっしゃろ?」
「社長、そこが僕も納得できないんですよ。営業活動を順調に行って存続している
会社の株式について,譲渡人は譲渡利益の獲得等を目的とし,譲受人は株式を
保有して事業拡大や含み益の増加による株価の上昇を期待して,取引価額を交渉
するものとみられるから,このような当事者にとっては,会社の清算を前提とした
法人税額等相当額を控除した純資産価額で株式を売買する取引は通常考えらない。
っていう説明何だけどね。変だなー。」
「どうします。先生の好きな訴訟やりますか?」

(以上は判決要旨にもとづく勝手なフィクション。)

最高裁判例 平成17年11月8日 第三小法廷判決 平成14年(行ヒ)第112号 所得税更正処分等取消請求事件
判決要旨
「……所得税基本通達23〜35共−9(4)は,上記期日における新株の価額について,当該新株が非上場株式で気配相場や売買実例がなく,類似法人比準方式により評価することができない場合には,上記期日又はこれに最も近い日における発行法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額とする旨を定めている。……評価通達の定める非上場株式の評価方法は,相続又は贈与における財産評価手法として一般的に合理性を有し,課税実務上も定着しているものであるから,これと著しく異なる評価方法を所得税及び法人税の課税において導入すると,混乱を招くこととなる。…法人税基本通達(改正前のもの)9−1−15は,評価通達の定める非上場株式の評価方法を,原則として法人税課税においても是認することを明らかにするとともに,この評価方法を無条件で法人税課税において採用することには弊害があることから,1株当たりの純資産価額の計算に当たって株式の発行会社の有する土地を相続税路線価ではなく時価で評価するなどの条件を付して採用することとしている。このことは,所得税課税においても同様に妥当する・・・… このような修正をした上で同通達所定の1株当たりの純資産価額の算定方式にのっとって算定された価額は,一般に通常の取引における当事者の合理的意思に合致するものとして,所得税基本通達(改正前のもの)23〜35共−9(4)にいう「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に当たるというべきである。
ところで,評価通達(改正前のもの)185が,……法人税額等相当額を控除するものとしているのは,・・・… 評価の対象となる会社が現実に解散されることを前提としていることによるものではない。したがって,営業活動を順調に行って存続している会社の株式の相続及び贈与に係る相続税及び贈与税の課税においても,法人税額等相当額を控除して当該会社の1株当たりの純資産価額を算定することは,一般的に合理性があるものとして,課税実務の取扱いとして定着していたものである。
・・・… 本件を原審に差し戻すこととする。」

本判決では、評価通達(改正前のもの)185が法人税額等相当額を控除することと規定していることの趣旨をあきらかにしているとともに、通達の法規範性や他法令との関係についても明示した判決といえる。なお、ご存知のように法人税額等相当額の控除については既に改正され、現在は所得税基本通達については平成12年課資3−8,課所4−29による改正により,法人税基本通達については平成12年課法2−7による改正により,所得税及び法人税の課税における1株当たりの純資産価額の評価に当たり法人税額等相当額を控除しないことが規定されている。
本事件における高裁判決では「通達は,国民に対して拘束力を有する法規とは異なるものであるが,租税実務における通達に基づく画一的な取扱いは,納税者間の公平,納税者の便宜及び徴税費用の節減という見地からみて合理的なものというべきである。したがって,通達の定めが租税法規に照らして合理性を有する限り,当該租税法規の適用に当たっては,通達の定めに従った解釈,運用を行うのが相当である。」として通達の法規範性についてあらためて言及している。この点に関しては最高裁も同じくしている。通達は課税行政庁としての法解釈指針ではあるが、その通達が合理性をもっている場合には、公正妥当な解釈基準として受入れる必要がある。財産評価通達のような通達は、財産評価における「一般に公正妥当な評価基準」として他法令における計算に利用されることになる。ただし、利用する法令の目的とするところに応じてそれらに「必要な修正」が加えられることは当然である。通達が目的とするところ、各法令の目的とするところを良く理解していなければ、加えられる「必要な修正」を調査などで指摘された場合即座に反論することは難しい。税理士が税務通達と向き合う上で注意すべき一つではないだろうか。

2005年07月18日


「これは立替金の死亡にともなう始期付免除ですね。」
「なんじゃ、そりゃ!! おやじから金をもらったのは10年前だぞ。贈与税の申告をしていなかったの悪かったけど。それにしても、もう時効だろ。」
「時効なんて簡単にいいますけどね、3億円ものお金を受取っていて、贈与申告もなく贈与契約書もなく 今になって贈与があったなんて説得力ないんですよ。あなたは、資力があったみたいだし、一時的にお父さんからお借りになったんじゃないですか? 」
「もともと返すつもりなんかないよ。なに言うんだよ。」
「あなたは、当時、受取ったお金の全額を借入金の返済にあてましたね。一時的に資金が必要だったから、お父さんから借りて返済に充て、後々 株の売却代金でお父さんには返そうと思っていたが、結局お父さんが亡くなるまで返さなかった。」
「勝手にストーリーを考えないでよ。」
「お父さんがなくなって、もう返済しなくて済んだんだから、死亡時に贈与があったとみなされますよ。だから本件は立替金の死亡にともなう始期付免除なんですよ。」
「ちょっと、先生! さっきから感心して聞いてないで、この人になんか言ってよ。」
10年前に3億も金を貰っていたなんて知らんぞ。と思いながらも段田税理士は調査官に言った。「金額は常識から言っても多額ですが、これは単なる父子間の単純な金銭贈与ですよ。」調査官はニヤつきながら、「まあ、税理士先生の見解は上に伝えておきます。」
「あと、この土地に付いていた抵当権ですが、物上保証として債務控除を行った件に関してですが全額は認められないですね。」
「抵当権の優先順位として上位のものはありますが、まずは当該債務を充当すると、関係者間で合意していますから、全額控除してもいいでしょ。」段田税理士は言った。
「まあ、それも伝えておきます。とりあえず調査はこれで終了いたします。後日 先生を通して結果についてお知らせいたします。」そう言うと調査官は、帰っていった。
「先生、調査官は ゴッホの絵の事は言わなかったね。評価が安いと絶対に言われると思ってたよ。」

(その後)
生前贈与分は、相続財産として加算。土地にかかわる物上保証の債務控除は一部否認として更正処分決定。後に納税者は行政処分について不服申立、審査請求、税務訴訟を起こす。その過程において調査時に指摘のなかった絵画評価に関しても、更正処分の対象とされる。
(以上 事実の要旨は以下の判例に基づくフィクションです。)

平成17年3月30日 静岡地方裁判所判決   課税庁の処分一部取消判決。
 判決の要旨
1 生前贈与分の法的評価について
交付した金員の返還請求がないこと。受取人は贈与されたものと理解していたこと。
高額であるものの、父から子らに対する金員の交付であると考えられること。
受取人は返済するだけの資力はなかったこと。贈与契約書等の作成や贈与税の申告など準備行為をした形跡がないからといって、贈与ではないとは言えないこと。
以上により生前贈与分を相続財産に加算して課した課税庁の処分は取消し。

2.土地における物上保証による債務控除について
 銀行や他社の本件各先順位根抵当権について放棄若しくは譲渡の登記手続がなされていないこと。控除の根拠となった本件合意の存在を認めるに足りる証拠はないこと。
以上により、債務の全部は控除できない。原告の主張は棄却。

3 絵画の評価額について
調査の過程で指摘されなかったことがその後新たに争点になった事は、総額主義の税務訴訟では予測可能な事であり、信義則に反するものではない。
相続により取得した財産の評価額は、当該財産の「取得の時における時価」によることとされており(相続税法22条)、「取得の時」とは、被相続人死亡の日であり、「時価」とは、財産の客観的な交換価値のことであり、自由な取引において通常成立すると認められる価格を意味する。そして、本件絵画のような書画の時価を評価するにあたっては、売買実例価格、精通者意見価格等を参酌して評価することとされている〔財産評価基本通達135(2)〕。原告、被告の両者の鑑定評価書とも売買実例価格、精通者意見価格等を参酌して評価としては不十分であるとした上で、原告の評価額は低いと認定される。課税庁の更正処分に違法性はみられないとする。
絵画等の美術品の評価に関する税務証拠資料の難しさを浮き彫りにしている。
    参 照  (静岡地裁平成12年(行ウ)第17号相続税更正処分等取消請求事件)



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